国際協働の現場では、言葉選びにもその土地の歴史や文化への理解の深さが表れます。
シドニーのリサーチで学んだのは、オーストラリアの先住民族について、「First Nations people」という表記・呼称が使われているということです。「First Nations」は単に「先に住んでいた人々」ではなく、「この土地における最初の、そして現在も存在する国民」であるという主体的なアイデンティティを示します。複数の「Nation(国家、民族単位)」の存在を認め、尊重する、より敬意ある包括的な言葉として用いられています。
また、かつては「アボリジニ」としてひとくくりに表現されていた「Torres Strait Islander peoples(トレス海峡諸島民)」は、文化的にも歴史的にも異なる背景をもつことから、区別して表記されます。両者を包括する場合は、「Aboriginal and Torres Strait Islander peoples」と表現するのが適切とされています。